最終更新:2026-08-21/著者:元警察官ヒロ
※本記事には広告(PR)を含みます。制度の内容は記事作成時点のものです。
いま「まだ大丈夫」と思っていませんか。
私は警察官として17年勤めました。留置場勤務のときに上司からパワハラを受け、相談窓口に報告しましたが、状況は変わりませんでした。そのあと適応障害と診断され、休職し、43歳で辞めました。
この記事は、休職とお金の話です。給料は出るのか、ボーナスはどうなるのか、退職金は減るのか。全部書きます。
ただ、その前にどうしても先に言っておきたいことがあります。
休んでください。金の計算はそのあとでいい
私が休職を決められたのは、妻が私の不調に気づいて「休んだほうがいい」と言ってくれたからです。自分から決めたわけではありません。
いま振り返ると、あのまま進んでいたら私は正常な判断ができなくなっていたと思います。休職という選択肢を選ぶことすら、できなかったはずです。
だから私は、こう考えています。「まだ大丈夫」と思えているうちが、休む決断ができる最後のタイミングです。
限界を越えてから休もうとしても、そのときには決断する力そのものが残っていません。私はそれを、ぎりぎりのところで妻に助けられました。
あなたがいまこの記事を検索して、ここまで読めているなら、まだ判断できる状態にあるということです。その状態のうちに、病院に行ってください。休職でなくてもかまいません。年休でも、異動の相談でも、とにかく今の環境から距離を取る行動をひとつ起こしてください。
上司に何と言われても、同僚にどう思われても、最後に責任を取るのはあなた自身です。誰も代わってはくれません。
そのうえで、お金の話をします。休むかどうかを、金の心配で決めてほしくないからです。ここから先は、あなたが休まない理由を一つずつ潰すために書きます。
休み方には順番がある
私の場合、診断が出てすぐ休職したわけではありません。まず年次休暇を消化して、それから病気休暇に入りました。
年休は理由を聞かれませんし、給料も満額です。まず年休、次に病気休暇、それでも足りなければ休職。この順に進みます。
「休職」という言葉が重くて相談をためらう人がいますが、その手前に段階があります。いきなり休職を申し出る必要はありません。
給料は出ます
病気休暇は連続90日が上限です。国家公務員では人事院規則15-14 第21条が定めていて、多くの自治体もこれに準じています。この90日は給料が全額出ます。
90日を超えてもまだ療養が必要なときは、休職に移ります。ここで額が変わります。
心身の故障による休職の場合、その休職の期間が満1年に達するまでは、俸給、扶養手当、地域手当、通勤手当、住居手当、期末手当等の100分の80を支給する
(一般職の職員の給与に関する法律 第23条。公務上の負傷・疾病による休職は全額)
図1|休んでから、収入はこう変わる
国家公務員の場合。根拠=人事院規則15-14 第21条(病気休暇の上限)/一般職の職員の給与に関する法律 第23条(休職者の給与)。地方公務員は各自治体の条例によるため、8割が支給される期間などは県によって異なります。
満1年を超えると原則として無給になり、そのあとは共済組合の傷病手当金に切り替わります。
私の記憶では、3か月ほどは給料が振り込まれ、そのあとは満額ではないものの相応の額が出ていました。時期の記憶は曖昧なので断定はできませんが、90日は全額、そのあとは8割、という制度の流れとは合っています。
つまり、休んだ翌月からいきなり収入が途絶えるわけではありません。ここは安心してください。
ただし地方公務員は各自治体の条例によります。8割が出る期間が1年か2年かも県によって違います。ご自身の県の条例を見てください。
ボーナスも出ます。減るだけです
期末手当と勤勉手当は、基準日である6月1日と12月1日に在職していれば支給されます。休職中でも在職はしています。
額は在職期間と勤務期間に応じて決まり、休んだ期間はそこから差し引かれます。東京都の職員の期末手当に関する規則 第4条第2項では、給料が出ていない休職の期間は5割、停職は10割を除算すると定めています。割合は自治体によって違います。
私の実感も同じでした。算定期間に働いていた対象の支給は普通に出ました。復帰したあと、算定期間に病休が入っていた対象の支給は減っていました。
「休職したらボーナスはゼロ」と思っている人がいますが、そうではありません。
退職金は減ることがあります
ここは仕組みを知らないと気づけません。
退職手当の基本額は、給料月額つまり本俸に支給率を掛けて決まります。支給率は勤続年数と辞め方で変わります。
問題は、この勤続年数が在職年数と同じではないことです。
前三項の規定による在職期間のうちに休職月等が一以上あつたときは、その月数の二分の一に相当する月数……を……在職期間から除算する
(国家公務員退職手当法 第7条第4項)
休んだ期間がそのまま引かれるのではなく、その2分の1が引かれます。育児休業は3分の1や4分の1と、また別の割合です。
私の退職手当計算内訳書の実数を出します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 在職期間 | 17年5か月 |
| 除算期間 | −6か月(育児休業と休職) |
| 残り | 16年11か月 |
| 1年未満を切り捨て | 勤続年数 16年 |
| 算定基礎額(給料月額) | 329,900円 |
| 支給率 | 12.881430 |
| 退職手当額 | およそ425万円 |
在職17年5か月が、退職手当の計算では16年になりました。除算された6か月そのものより、そのあとの1年未満切り捨てで階段を1段下りたことのほうが効いています。
早期退職の割増も、自己都合の減額率が外れる線も、「勤続20年」といった年数で引かれています。その20年は在職年数ではありません。除算と切り捨てを経たあとの勤続年数です。境目にいる人は書面で確認してください。
公務災害なら、減りません
国の条文では、除算の対象になる「休職月等」の定義から、公務上の傷病による休職と通勤による傷病による休職が外されています。徳島県や広島市の条例も同じつくりでした。
同じ病名で同じ期間休んでも、公務災害と認定されているかどうかで退職金が変わります。給料も、公務上の傷病なら休職中は全額です。二重に効きます。
図2|公務災害と認定されるかどうかで、二重に変わる
同じ病名で同じ期間休んでも、扱いが変わります。根拠=国家公務員退職手当法 第7条第4項(除算の対象となる「休職月等」から公務上の傷病による休職・通勤による傷病による休職を除く)/一般職の職員の給与に関する法律 第23条。認定を受けられるかは事案ごとの判断です。
パワハラや過重業務による適応障害で公務災害の認定を受けられるかは、事案ごとの判断です。認定のハードルは低くありません。それでも、認定されれば給料も退職金も扱いが変わるという事実は、休職に入る前に知っておく値打ちがあります。
割合も条番号も県によって違います
条文を実際に開いて並べました。
| 条番号 | 休職の除算 | 育児休業の除算 | |
|---|---|---|---|
| 国(国家公務員退職手当法) | 第7条第4項 | 2分の1 | 別法による |
| 京都府 | 第8条第4項 | 2分の1(公務上傷病以外) | 3分の1(子が1歳まで) |
| 広島市 | 第7条第4項 | 2分の1 | 4分の1 |
| 徳島県 | 第7条第3項 | 2分の1 | — |
条番号からして違います。この論点でネットの一般論は役に立ちません。「(都道府県名) 職員の退職手当に関する条例」で検索して、「勤続期間の計算」の条を開いてください。
私の最大の失敗は、復帰した日付でした
復帰の日付は、体調と職場の都合だけで決めてしまいがちです。私もそうでした。ところが手当の支給も、共済の掛金も、日付ひとつで変わります。
私が失敗したのは育児休業から戻ったときでした。復帰の扱いを月の2日目にしたのです。深く考えていませんでした。
その月の通勤手当が、ほぼ全額支給されませんでした。
その要件を具備するに至つた日の属する月の翌月(その日が月の初日であるときは、その日の属する月)から開始
(東京都 通勤手当支給規程 第6条第1項)
図3|復帰日が1日ずれると、通勤手当は1か月分消える
根拠=東京都 通勤手当支給規程 第6条第1項「その要件を具備するに至つた日の属する月の翌月(その日が月の初日であるときは、その日の属する月)から開始」。休職・病気休暇からの復職でも同じ条文が働きます。現在は日割り計算へ改められている自治体もあるため、必ずご自身の勤務先で確認してください。
月の初日に復帰すればその月から出ます。1日でもずれれば、翌月からになります。同じ規程の第9条は、月の初日から末日まで一度も通勤しない月には支給しないとも定めています。2日に復帰した時点で、その月は制度上ゼロだったわけです。
私が退職したあと、この扱いは日割り計算に改められました。ただし改正の時期も中身も自治体によって違うので、いまどうなっているかは必ず確認してください。
そして、これは育児休業に限った話ではありません。休職や病気休暇から復職するときも、まったく同じ条文が働きます。あなたが復職する日付でも同じことが起こります。
共済の掛金についても整理しておきます。掛金が免除されるのは育児休業などの場合だけで、病気休暇や休職では免除されません。育休の免除は「開始日の属する月から、終了日の翌日の属する月の前月まで」なので、効くのは1日か2日かではなく、月末をまたぐかどうかです。
だから、復帰の日取りを決める前に、警務課の担当者に一言聞いてください。「この日に復帰すると、手当と掛金はどうなりますか」。それだけです。担当者は答えを持っています。聞かなかった私は1か月分の通勤手当を失いました。
休職について私が後悔していることがあるとすれば、休んだこと自体ではありません。制度を調べずに日付を決めたことです。
辞めるかどうかは、戻ってから決めればいい
休職と退職は別の判断です。休職は身分を残したまま療養する制度で、戻る選択肢が手元に残ります。
先に休んで、頭が働く状態になってから進路を決める。順序としてはこれが自然だと思います。私は休職を経て退職しましたが、休んだこと自体を後悔したことは一度もありません。
そのうえで、辞める可能性が少しでもあるなら、在職中に一度、自分の経歴にどんな求人が来るのかを見ておくことをおすすめします。
私自身は、警察官の経験が転職市場で高く評価されたとは言えませんでした。ただ、経験に価値がなかったという話ではありません。私が望んだ先がIT系で、開発の実務経験も実績もなく、年齢的に将来性で採る対象でもなかった。経歴と希望職種が噛み合っていなかっただけです。
実際、交通捜査に長く従事した人が損害保険会社の事故調査業務で評価されるのは、私の周りでは定番のルートでした。同じ経験でも、持っていく先が違えば評価はまるで変わります。
その噛み合わせは、組織の中にいるかぎり分かりません。私が損保のルートを知ったのも辞めたあとでした。在職中に見ておけば、結果を見てから「やはり戻る」と決め直すこともできます。休職中で時間があるなら、なおさら向いています。
もう一度だけ
給料は出ます。ボーナスも出ます。退職金は多少減ります。ただ私は、心身を壊して失うものに比べればその差は小さいと判断しました。
金の心配で休む決断を先延ばしにしないでください。
「まだ大丈夫」と思えているうちが、決められる最後のタイミングです。私はそう思っています。病院に行ってください。仕切り直してください。

コメント