「適応障害と診断されたけど、退職すべきなのか、休職で様子を見るべきなのか」。警察官として働いている方の中には、今まさにこの判断に迷っている方もいるのではないでしょうか。
結論から言えば、適応障害になった警察官が最初に検討すべきは「退職」ではなく「休職」です。休職は地方公務員法第28条で身分保障が認められており、共済組合の傷病手当金で標準報酬月額の約2/3が最長1年6か月支給されます。決断を急がず、収入を確保しながら冷静に判断する時間を確保できます。
私自身、留置場勤務時のパワハラがきっかけで適応障害と診断され、休職を経て43歳で退職しました。あの時「もっと早く決断していれば」と思うことも、「休職期間があったからこそ冷静に考えられた」と思うこともあります。
この記事では、私の実体験と公的制度の根拠条文をもとに、休職と退職それぞれのメリット・デメリット、収入シミュレーション、退職後の公的支援、そして後悔しないための判断基準を体系的にまとめます。
著者:元警察官ヒロ(警察官として約20年勤務/FP有資格/2026-05-04 更新)
- 適応障害やうつ症状で休職中、または休職を検討している警察官
- 休職と退職のどちらを選ぶべきか判断に迷っている方
- パワハラや人間関係のストレスで心身の限界を感じている方
- 休職中の収入や退職後の手続き・公的支援を具体的に知りたい方
- 退職後の生活やキャリアに不安を感じている方
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警察官と適応障害──「弱いから」ではない
警察官は強くなければならない。そう思い込んでいる方は多いのではないでしょうか。しかし、適応障害はその人の弱さではなく、環境と自分の間にある「ずれ」が原因で起こるものです。
私の場合、留置場勤務時に上司から繰り返しパワハラを受けたことがきっかけでした。組織内の相談窓口に報告しましたが、結果的に組織がそれを隠蔽する形になり、「味方はいない」という絶望感が一気に押し寄せました。
眠れない日が続き、出勤前に動悸がするようになり、やがて「職場に行けない」状態になりました。心療内科で「適応障害」と診断されたとき、正直なところ、ほっとした気持ちもありました。「自分がおかしいのではなく、環境がおかしかったのだ」と理解できたからです。
一般的に、警察組織ではメンタルヘルスの問題が「弱さ」と見なされがちだと言われています。しかし、それは間違いです。過度なストレス環境に長期間さらされれば、誰でも心身に不調が出ます。
適応障害の医学的定義と警察官に多い症状パターン
適応障害は、はっきりと特定できるストレス要因(仕事・人間関係・環境変化など)に対して心身の反応が起こり、社会生活に支障をきたす状態を指します。うつ病とは異なり、ストレス源から離れれば比較的短期間で回復するのが大きな特徴です。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類ICD-10では「F43.2 適応障害」として正式に分類されています。
警察官に現れやすい3つの症状パターン
警察官の現場でよく見られるのは、以下の3パターンです。私自身も診断時に複数当てはまりました。
- 身体症状:出勤前の動悸・吐き気・頭痛・不眠・食欲低下。私の場合は出勤2時間前から動悸が止まらず、朝食が喉を通らない状態が数週間続きました。
- 感情症状:強い不安・抑うつ気分・無気力・イライラ・涙が止まらない。「制服を見るだけで吐き気がする」という同僚の話も耳にしました。
- 行動症状:遅刻・欠勤の増加・対人接触の回避・飲酒量の急増。これは周囲から「怠けている」と誤解されやすい点です。
警察官特有のストレス要因
警察官の業務には、他職種にはない特有のストレス要因があります。三交代勤務による生活リズムの乱れ、惨事ストレス(交通死亡事故・自殺現場・遺族対応など)、上意下達の階級組織、密室化しやすい職場の人間関係、そしてメンタル不調を相談しにくい組織文化──これらが重なると、誰でも適応障害を発症しうる土壌が整います。
警察庁の発表でも、警察職員の精神疾患による長期病休者は年々増加傾向にあると報告されています。これは個人の問題ではなく、組織全体で向き合うべき構造的な課題です。
休職を選ぶメリットとデメリット
適応障害と診断された場合、まず検討されるのが休職です。私自身も退職の前に休職期間を経験しました。
休職のメリット
- 給与の一部が保障される(共済組合の傷病手当金で標準報酬月額の約2/3)
- 身分が保全されるため、復帰の選択肢を残せる(地方公務員法第28条)
- 冷静に「本当に辞めるべきか」を考える時間が確保できる
- 退職という不可逆な決断を急がなくて済む
- 健康保険・年金(共済組合)の被保険者資格が継続する
休職のデメリット
- 「いつ復帰するのか」というプレッシャーが常にある
- 復帰後に同じ環境に戻される可能性がある
- 周囲の目が気になり、精神的に休めないことがある
- 休職期間が長引くほど復帰のハードルが上がる
- ボーナスが減額または不支給となるケースが多い
休職は「決断を保留する」ための重要な選択肢です。ただし、休職中もストレス源が頭から離れないのであれば、休んでいるつもりでも回復しないケースもあります。その場合は主治医と相談のうえ、休職期間の延長や治療方針の見直しを検討してください。
休職中の収入シミュレーション|傷病手当金の実額
「休職したら収入はどうなるのか」は、最も気になる点ではないでしょうか。地方公務員(警察官含む)の場合、共済組合の傷病手当金が支給され、ベースは「標準報酬月額の2/3相当額」を最長1年6か月です。実額をモデルケースで見ていきます。
モデルケース|階級別の休職中月額収入(参考シミュレーション)
- 巡査・35歳・標準報酬月額33万円:傷病手当金 約22万円/月(年額換算 約264万円)
- 巡査部長・40歳・標準報酬月額38万円:傷病手当金 約25万円/月(年額換算 約304万円)
- 警部補・45歳・標準報酬月額44万円:傷病手当金 約29万円/月(年額換算 約352万円)
※上記は標準報酬月額×2/3で機械的に算出した参考値です。実際の支給額は各都道府県警察共済組合の規定・勤務年数・休職開始からの経過期間で変動します。正確な見込み額は所属の共済組合窓口で必ず確認してください。
休職中も支払いが続く主な固定費
収入が約2/3になる一方、休職中も以下の支出は継続します。
- 共済組合の保険料・年金保険料(給与天引きから請求書払いに切り替わる)
- 住民税(前年所得に対して課税されるため、休職初年度は特に重い)
- 住宅ローン・家賃・光熱費・通信費・教育費
- 民間の生命保険料・医療保険料
私の場合、休職に入る前に保険を見直し、月約15,000円(年間約18万円)の固定費を削減しました。休職中の家計を守るには、診断が下りた段階で家計の総点検をしておくことが現実的な備えになります。

退職を選ぶメリットとデメリット
退職のメリット
- ストレスの根本原因から完全に離れられる
- 新しいキャリアや生き方を自由に模索できる
- 「いつ復帰するか」のプレッシャーから解放される
- 家族との時間や自分の健康を最優先にできる
- 退職手当(勤続年数に応じた一時金)を受け取れる
退職のデメリット
- 公務員の安定した収入・年金・福利厚生を失う
- 警察官のキャリアをゼロからやり直すことはできない
- 転職活動に不安やプレッシャーがある
- 家族の理解と経済的な準備が必要になる
- 住宅ローン審査・賃貸契約の与信が一時的に弱くなる
退職は不可逆な決断です。しかし、心身の健康を損ない続けるリスクと比較すれば、退職は「逃げ」ではなく「自分を守る選択」です。
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退職後の公的支援|健康保険・年金・失業給付の手続き
退職後は、それまで給与天引きで処理されていた制度を自分で切り替える必要があります。適応障害で退職する場合、特に「自己都合退職」と「特定理由離職者」の区分の違いで失業給付の条件が大きく変わるため、知っておくと損をしません。
1. 健康保険の3つの選択肢
- 共済組合の任意継続:最長2年間。保険料は全額自己負担(給与天引き時の概ね2倍)。在職中の保障に近い水準を維持できる。
- 国民健康保険:市区町村の窓口で手続き。前年所得で保険料が決まるため、退職初年度は高くなりがち。
- 家族の健康保険の被扶養者:配偶者などが会社員で、年収要件を満たせば加入可能。保険料は実質ゼロ。
3つを退職前に試算し、最も保険料が安い選択肢を選ぶのが鉄則です。私の場合は妻の健康保険の被扶養者になる選択肢が使えなかったため、任意継続と国保を比較して国保を選びました。
2. 年金の切り替え
共済組合の被保険者資格を喪失するため、国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です(市区町村窓口)。配偶者の扶養に入れば第3号被保険者となり、本人の保険料負担はゼロになります。
3. 失業給付(基本手当)の特例
適応障害などの傷病が原因で退職する場合、医師の診断書があれば「特定理由離職者」として認定される可能性があります。認定されれば、自己都合退職の2か月の給付制限が解除され、給付日数も手厚くなります。
- 自己都合退職:給付制限2か月・給付日数 90〜150日
- 特定理由離職者:給付制限なし・給付日数 90〜330日(年齢・被保険者期間で決定)
ハローワークで離職票と医師の診断書を提示し、特定理由離職者の認定を申請してください。私も離職時にこの制度を利用しました。手続きは煩雑ですが、生活の支えになります。
4. 退職後も傷病手当金は受け取れるケースがある
退職時点で共済組合の被保険者期間が継続して1年以上あり、退職時に傷病手当金を受給中であれば、退職後も同じ傷病で最長1年6か月(残期間)の継続支給を受けられる場合があります。退職後の収入の柱になりうるため、退職前に共済組合窓口で必ず確認してください。

私が退職を選んだ理由と経緯
私の場合、休職中も状況は改善しませんでした。組織に対する不信感は休んでいる間も消えることはなく、「復帰してもまた同じことが起きるのではないか」という恐怖がありました。
決断の決め手は、妻の言葉でした。「無理をして働き続けるより、新しい道を選んだほうがいい」。この一言で、ようやく「辞めてもいいんだ」と思えるようになりました。
退職前には夫婦でライフプラン表を作成し、将来の収支をシミュレーションしました。在職中からiDeCoやNISAで資産形成をしていたことが、「辞めても大丈夫」という安心感につながりました。退職時の総資産は約6,500万円。これがあったからこそ、焦らずに次のステップを考えることができました。
退職の決断は一人で抱え込まないでください。家族やプロのサポートを借りて、冷静に判断することが大切です。
適応障害から復帰・転職した警察官の3つのパターン
適応障害になった警察官の進路は、大きく3つのパターンに分かれます。私の周囲で見聞きしたケースをもとに整理します。「退職ありき」ではなく、自分に近いパターンを参考にしてみてください。
パターン1|異動・配置転換で復職して継続
原因が特定の上司・部署に限定されている場合、産業医面談と人事への相談を通じて配置転換が認められることがあります。階級や昇任への影響を最小限にしたい方、安定収入を維持したい方に向いています。ただし、組織文化そのものに違和感がある場合は再発リスクがあるため、復職前に主治医と慎重に相談することが必要です。
パターン2|退職して別の公務員職へ転身
市役所・県庁・刑務官・国家公務員一般職など、より働き方が穏やかな公務員職へ転身するパターンです。共済組合の通算制度を使えば年金面での損失を抑えられます。30代までであれば公務員試験経由で転身する余地があり、警察官の経験は面接で評価されやすい傾向があります。
パターン3|退職して民間企業・フリーランスへ
私自身が選んだ道です。Web制作・広報・コンプライアンス・警備保障・損害保険調査など、警察官の経験が評価される民間職は意外に多くあります。私の場合はハローワークの職業訓練でWebマーケティングとWeb制作を学び、現在はフリーランスとして在宅で働いています。妻の収入と株式配当・在宅収入を組み合わせたサイドFIRE的な働き方に落ち着いています。
3パターンに共通するのは、「辞める/辞めないを決める前に、選択肢を全て知ってから決める」ことです。情報がない状態で決断するのが最もリスクが高いと、振り返って強く思います。
判断するときに大切な3つの基準
休職か退職かで迷ったとき、私が振り返って「これを基準にすればよかった」と思うポイントが3つあります。
1. ストレスの原因は「環境」か「仕事そのもの」か
パワハラや特定の上司が原因であれば、異動や配置転換で改善する可能性があります。この場合は休職して復帰を検討する価値があります。しかし、警察という組織文化そのものに限界を感じているなら、復帰しても同じ問題が形を変えて繰り返される可能性が高いです。
2. 経済的な準備があるか
退職する場合、最低でも半年〜1年分の生活費の確保が目安です。共済組合からの退職手当金、失業給付(特定理由離職者なら待機期間なし)、傷病手当金の継続支給、そして貯蓄や投資資産を総合的に確認してください。経済的な準備が十分でなければ、まず休職しながら準備を進めるのが現実的です。
3. 家族の理解が得られているか
特に既婚者や子育て中の方は、パートナーとの対話が不可欠です。私の場合、妻が「辞めてもいい」と言ってくれたことが最大の後押しになりました。逆に言えば、家族の理解なしに退職を強行すると、転職後の生活がさらに苦しくなるリスクがあります。
迷ったら、まず「辞めなくてもいい準備」から始めてみてください。準備が整えば、いつでも決断できます。
よくある質問
Q1. 警察官が適応障害で休職する場合、給与はどうなりますか?
A. 共済組合から傷病手当金として標準報酬月額の約2/3が、最長1年6か月支給されます。例えば標準報酬月額33万円の方なら月額約22万円です。ボーナスは減額または不支給となる自治体が多く、各都道府県警察共済組合の規定で異なるため、休職前に必ず窓口で確認してください。住民税・社会保険料は引き続き発生するため、家計の試算が必要です。
Q2. 適応障害で休職した場合、復帰後の昇任は不利になりますか?
A. 自治体や時期、休職期間の長さによって扱いは異なります。一般論として、長期休職が昇任試験の受験資格や勤務評定に影響する可能性は否定できません。ただし、近年はメンタルヘルスへの理解が組織内でも進んでおり、復帰後に昇任した事例も少なくありません。具体的な扱いは所属の人事担当に直接確認することが確実です。
Q3. 休職と退職、どちらを先に検討すべきですか?
A. 原則として休職を先に検討してください。理由は3つあります。第一に、休職は決断を保留する時間を確保できます。第二に、傷病手当金で収入を維持できます。第三に、休職を経て退職に進むことは可能ですが、退職してから「やはり戻りたい」と思っても警察官に再採用される道は基本的に閉ざされます。退職は不可逆な決断であることを忘れないでください。
Q4. 退職した場合、健康保険や年金はどうなりますか?
A. 健康保険は「共済組合の任意継続(最長2年)」「国民健康保険」「家族の被扶養者」の3択から選びます。年金は国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です(配偶者の扶養に入れる場合は第3号)。退職前に各窓口で保険料を試算し、最も負担の軽い選択肢を選んでください。退職後の手続きは原則14日以内が目安です。
Q5. 適応障害で退職したことを次の職場に伝える必要はありますか?
A. 法律上、過去の病歴を自発的に申告する義務はありません。ただし、業務に支障が出る可能性が高い場合や、配慮を希望する場合は、入社前後に伝えるのが現実的です。転職エージェントを活用すれば、企業への事前伝達や配慮要請を代行してもらえるケースもあります。私の周囲では「退職理由は家庭の事情・キャリア再設計」と整理して伝え、入社後に体調管理上の配慮を別途申し出た方が多い印象です。
まとめ|壊れる前に、選択肢を知っておくこと
適応障害と診断されたとき、休職と退職のどちらを選ぶかに正解はありません。大切なのは、「今の自分にとって何が最善か」を冷静に判断することです。
- 適応障害は環境と自分のずれが原因。「弱さ」ではなく構造的な問題。
- 原則は休職→様子を見て退職を判断。決断を急がない。
- 休職中は標準報酬月額の約2/3、最長1年6か月の傷病手当金が支給される。
- 退職時は特定理由離職者の認定で失業給付の条件が大きく改善する。
- 進路は「異動復職/公務員転身/民間・フリーランス」の3パターン。選択肢を全て知ってから決める。
私自身、休職を経て退職を選びました。退職後のキャリアにはまだ模索中の部分もありますが、「あのとき辞めなければ、本当に壊れていたかもしれない」と今でも思います。
あなたが今、苦しい状況にいるなら、一人で抱え込まず、まずは選択肢を知ることから始めてみてください。キャリアの専門家に話を聞いてもらうだけでも、頭の中が整理されることがあります。
この記事の結論|あなたの次の一歩を支えるサービス3選
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【免責事項】本記事は元警察官の体験と公開情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、医療判断・法律判断・個別の人事処遇を保証するものではありません。適応障害が疑われる症状がある場合は心療内科・精神科の医師に、傷病手当金や退職手続きの個別具体的な扱いは所属の共済組合・人事担当・ハローワークなど公的窓口に必ずご確認ください。




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