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警察官の早期退職に退職金の割増はある?|国は3%、都道府県は条例次第

朝の光が差す机の上に書類・電卓・封筒が置かれている様子 警察官の転職方法
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定年まではとてももたない。そう思いながら、辞めるなら退職手当が少しでも多いタイミングにしたい。そう考えたことはないでしょうか。調べると「定年前に辞めると1年につき2%割り増される」といった説明が出てきます。ところがこの数字、そのまま自分に当てはめると間違います。

私は警察官として17年勤め、43歳で自己都合退職しました。手元にある退職手当の計算内訳書を見ながら、条文に当たって確認した内容をまとめます。

この記事がオススメの人
  • 勤続20年前後で、定年前に辞めることを考えている警察官の方
  • 「早期退職の割増」がいくらなのか、正確なところを知りたい方
  • 退職の時期によって退職手当がどれだけ変わるのかを見ておきたい方

結論|割増はあります。ただし「2%」を自分に当てはめてはいけません

定年前に辞める職員の退職手当を割り増す制度は、実在します。ただし割増の率も、対象になる勤続年数も、対象になる年齢も、制度の入口そのものも、国と自治体でまったく違います。

ネット上でよく見かける「1年につき2%」は東京都の数字です。国は3%です。しかも国の制度は職員が自分から手を挙げる「募集・応募」の仕組みで、東京都は勧奨退職です。名前も入口も違う制度の数字が、ひとつの一般論として流通しています。

都道府県警察の警察官は、警視正以上の階級にある方(地方警務官)を除いて地方公務員です(警察法第56条第1項)。つまりあなたに適用されるのは、所属している都道府県の退職手当条例です。国の数字でも、他県の数字でもありません。

国と3つの県を条文で比べると、4通りに分かれました

実際にどのくらい違うのか、国の法律と3つの県の条例を開いて並べてみました。二次情報ではなく、条文そのものから拾った内容です。

勤続の要件年齢の要件割増の率(1年につき)いつまでに辞めるか制度の入口
20年以上定年から20年を減じた年齢以上3%(残り1年なら2%、指定職は2%または1%)定年に達する日の6か月前まで応募認定(募集に応募する)
東京都25年以上定年から10年を減じた年齢以上2%(指定職は1%)定年に達する会計年度の初日前勧奨(条文に「募集」「応募」の語なし)
和歌山県20年以上定年から20年を減じた年齢以上3%(残り1年なら2%)定年に達する日の6か月前まで募集・応募
茨城県20年以上人事委員会規則で定める年齢以上3%を超えない範囲で人事委員会規則が定める率定年退職日の1年前まで勧奨(知事の承認を要する)
出典:国家公務員退職手当法 第5条の3・同法施行令 第5条の3/東京都 職員の退職手当に関する条例 第6条の3/和歌山県 職員の退職手当に関する条例 第5条の3/茨城県 職員の退職手当に関する条例 第5条の3(いずれも2026年7月時点の条文を確認)

4つ並べただけで4通りです。和歌山県は国とほぼ同じ形で、東京都は勤続の要件が5年重く、対象になる年齢は10年遅く、率は1%低い。茨城県にいたっては、率そのものが条例に書かれておらず、人事委員会規則に委ねられています。

ここから言えることは、ひとつだけです。この論点でネットの一般論は役に立ちません。自分の所属の条例を見る以外に、正確なところを知る方法はありません。

「第5条の2」と書いてある解説には注意してください

国の割増を定めているのは第5条の3です。現行法の第5条の2は、俸給月額が減額されたことがある場合の特例という別の内容です。改正前の条番号のまま更新されていない解説記事が今も残っているため、金額に関わる部分は必ず条文そのものに当たってください。

自分の条例を確かめる、いちばん早い方法

多くの自治体は例規集をウェブで公開しています。「(都道府県名) 職員の退職手当に関する条例」で検索すれば、条文そのものに辿り着けます。探すのは「定年前早期退職者に対する退職手当の基本額に係る特例」という見出しです。上の表のとおり条番号は自治体によって違いますが、この見出しはほぼ共通しています。

条文を読むのがつらければ、人事や厚生を担当する部署に直接聞くのが早いです。聞き方は「自分の年齢と勤続年数で、定年前早期退職の割増の対象になりますか」で足ります。退職を前提にした相談でなくても、制度の適用要件を尋ねるだけなら差し支えありません。

なお、割増の対象年齢は「定年から何年を減じた年齢」という決め方になっています。定年は引上げの途中で年度によって動くため、「何歳から対象」と固定して覚えないでください。自分の退職予定年度の定年が何歳なのかを、あわせて確認する必要があります。

割増の前に確かめるべき2つの落とし穴

ここからは、私自身の退職手当計算内訳書を見ながら書きます。割増の率を調べる前に、これを知らないまま辞める人が多いと感じている論点が2つあります。

落とし穴1|「在職年数」と「勤続年数」は別のものです

私の内訳書には、在職期間と勤続年数が別々の欄に書かれていました。在職期間は17年5か月。ところが退職手当の計算に使われた勤続年数は16年でした。1年5か月ぶんが消えています。

図1|在職17年5か月が、勤続16年になるまで

在職期間
17年5か月
採用の月から退職の月まで
除算期間を引く
−6か月
休職・育児休業などの期間
残り
16年11か月
1年未満の端数は切り捨て
計算に使われた勤続年数
16年
支給率はここで決まる

筆者の退職手当計算内訳書の実数値。制度の根拠は国家公務員退職手当法 第7条(勤続期間の計算)。地方公務員は各自治体の条例によりますが、考え方は共通です。

休職や育児休業などで現実に職務をとらなかった期間は、その月数の一部が勤続期間から差し引かれます。これを除算といいます。国の法律では、休職などの期間はその月数の2分の1、育児休業のうち子が1歳に達した日の属する月までの期間は3分の1が除算されます(国家公務員退職手当法 第7条第4項、国家公務員の育児休業等に関する法律 第10条)。地方公務員も、国の取扱いを基準として条例で定めることとされています(地方公務員の育児休業等に関する法律 第8条)。

私の場合、差し引かれたのは合計6か月でした。それだけなら16年11か月です。ところが1年未満の端数は切り捨てられ、16年として計算されました。6か月の除算で、支給率の階段をまるまる1段下りたことになります。

ここが怖いところです。除算そのものは制度として当然の扱いですが、切り捨てが重なると、自分が思っている勤続年数と、計算に使われる勤続年数がずれます。早期退職の割増も「勤続20年以上」といった年数で線が引かれています。その20年は在職年数ではなく、除算と切り捨てを経たあとの勤続年数です。境目にいる方は、必ず自分の勤続年数を書面で確認してください。

落とし穴2|勤続19年以下の自己都合には、さらに率が掛かります

自己都合で辞める場合、計算した額にさらに一定の率が掛かります。国の法律では次のとおりです(国家公務員退職手当法 第3条第2項)。

図2|自己都合退職に掛かる率(国の場合)

60%
勤続1〜10年
80%
勤続11〜15年
90%
勤続16〜19年
率は掛からない
勤続20年以上

出典:国家公務員退職手当法 第3条第2項。地方公務員は各自治体の条例によります。棒の高さは率の大小を示したもので、金額の比較ではありません。

勤続20年に届くかどうかで、この率が外れます。私は勤続16年でしたから、掛かる側でした。早期退職の割増の要件も、国と、今回条文を確認した3県のうち2県で「勤続20年以上」ですから(東京都は25年以上)、勤続20年という線は、割増が付くかどうかと、この率が外れるかどうかの両方が同時に切り替わる場所ということになります。

ただし、率も区分も自治体の条例で定められており、国と同じとは限りません。金額の見込みを立てるときは、自分の条例の数字で計算してください。私の退職手当の実額と、その計算過程は別の記事に書いています。

いくらになるのか|公表資料で実際に計算してみます

制度の話だけでは、金額の感覚がつかめないと思います。ここからは実際に計算します。支給率の早見表と給料表の両方をウェブで公開している三重県の資料を使い、3つのパターンを出しました。自分の県の数字に置き換えられるよう、手順もそのまま書きます。

退職手当の基本額は、次の1行で決まります。

給料月額(本俸) × 支給率 = 退職手当の基本額

給料月額は、手当も残業代も含まない本俸です。給与明細の「給料」欄の額にあたります。実際の支給額には、これとは別に調整額が加わります(後述)。

手順1|自分の給料月額を知る(階級と「級」の対応)

給料表は「級」と「号給」で額が決まります。級は階級におおむね対応しています。三重県は級と階級の対応を公表していないため、対応表を公開している沖縄県の資料を引きました。給料表は9級まであり、下の表はそのうち3つを抜き出したものです。

職務の級基準となる職務(沖縄県の資料の表記)三重県 公安職給料表の額(例)
3級相当困難な業務を行う巡査部長の職務/困難な業務を行う巡査長の職務80号給 349,400円
4級警部補の職務/困難な業務を行う巡査部長の職務100号給 407,700円
5級警部の職務/困難な業務を行う警部補の職務80号給 433,200円
出典:沖縄県「公安職給料表(令和6年4月1日時点)」等級別基準職務表/三重県 公安職給料表(備考に「この表は、警察官である職員に適用する。」とあるもの)。いずれも2026年8月1日に確認。級と階級の対応は都道府県ごとに定められており、同じ階級でも級が違うことがあります。号給は経験年数などで上がるため、上の額はあくまで例です。

ひとつ注意があります。上の表のとおり、同じ級に複数の階級が入ります。4級には警部補だけでなく「困難な業務を行う巡査部長」も含まれます。階級から級を逆算するのではなく、給与明細に書かれている自分の級と号給を見るのが確実です。

手順2|勤続年数と辞め方から支給率を引く

支給率は、勤続年数と退職の理由の組み合わせで決まります。三重県は「退職手当の基本額支給率早見表」を公開しているので、そこから引きます。

級(階級の目安)給料月額勤続年数退職の理由支給率基本額
A3級(巡査部長)349,400円20年自己都合19.669500約687万円
B4級(警部補)407,700円25年自己都合28.039500約1,143万円
B’4級(警部補)407,700円25年定年・応募認定33.270750約1,356万円
C5級(警部)433,200円35年定年47.709000約2,067万円
出典:三重県「退職手当の基本額支給率早見表(平成30年4月1日以降)」。同表は条例附則による83.7/100の調整を含んだ計数です。基本額は1万円未満を四捨五入しています。調整額は含みません。

見てほしいのはBとB’です。同じ級・同じ給料月額・同じ勤続25年でも、自己都合か、定年・応募認定かで約213万円違います。前の章で書いた「勤続20年の線」に加えて、辞め方そのものが金額を大きく動かします。

なお、自己都合の支給率は、図2で説明した率(勤続19年以下に掛かるもの)をすでに織り込んだ数字です。二重に掛けないでください。実際、私の内訳書にあった「勤続16年・自己都合」も同じ表の12.881430で、私の給料月額に掛けると支給額と1円まで一致しました。表の読み方が合っていることの裏づけになります。

「3%」の正体は、約203万円です

ここでようやく割増の話に戻ります。3%という数字を見ると、退職手当が3%増えるように読めますが、そうではありません。割増は、給料月額そのものをかさ上げしたうえで、支給率を掛ける仕組みです。支給率は数十か月分ありますから、率の差はそのまま数十倍になって効きます。

上のB’の人が、定年まであと5年の時点で辞めた場合で計算してみます。

割増の率割増後の給料月額支給率基本額割増なしとの差
割増なし407,700円33.270750約1,356万円
国の3%(5年ぶんで15%)468,855円33.270750約1,560万円約203万円
東京都の2%(5年ぶんで10%)448,470円33.270750約1,492万円約136万円
率の違いだけを見るため、支給率は三重県の表で共通にしています。東京都は支給率表そのものも別に定められているため、東京都の実際の金額とは一致しません。また、国は応募認定退職、東京都は勧奨退職が前提で、要件も異なります。あくまで「率がいくらの価値を持つか」を示すための試算です。

「たった3%」ではありません。1年あたりの率が1%違うだけで、5年ぶんでは約68万円の差になります。自分の県の条例で率を確かめる価値は、十分にあります。

ここまでは「基本額」です。調整額が別に加わります

計算してきたのは退職手当の「基本額」です。実際の支給額には、これとは別に「調整額」が加わります。在職中の職務の級などに応じた区分ごとの月額を、高いほうから60か月ぶん合計したものです(国家公務員退職手当法 第6条の4第1項)。

この調整額にも、辞め方による差があります。自己都合などで辞める場合、勤続10年以上24年以下なら半額、勤続9年以下なら支給されません(同条第4項第3号・第4号)。ここでも「自己都合かどうか」「勤続何年か」が効いてきます。地方公務員は各自治体の条例によりますが、考え方は共通です。

三重県の資料からは調整額の区分まで一意に決められないため、この記事では計算していません。金額の見込みを立てるときは、基本額に調整額が上乗せされることを覚えておいてください。

最後に、この章の数字の扱いについてです。上の金額はすべて三重県の公表資料に基づく試算で、あなたの県の金額ではありません。支給率も給料表も、県ごとに定められ、改定もされます。号給の選び方も例にすぎません。使い方としては、「自分の給料月額 × 自分の県の支給率」という手順と、辞め方で数百万円動くという感覚を持ち帰っていただければ十分です。

それでも「いつ辞めるか」は、金額だけでは決まりません

ここまで制度の話をしてきて、最後に矛盾したことを書きます。辞める時期を退職手当の額だけで決めると、たいてい後悔します。

割増が付くまであと数年だからと在職を延ばしても、その数年で心身を壊せば意味がありません。逆に、割増を捨ててでも早く動いたほうがいい人もいます。決め手になるのは、辞めたあとに自分の経歴がどう扱われるかです。

私の場合、警察官の経験は転職市場であまり評価されませんでした。ただしそれは、警察官の経験に価値がないという話ではありません。私が望んだ先がIT系で、開発の実務経験も実績もなく、年齢的に将来性で採る対象でもなかった。経歴と希望職種が噛み合っていなかっただけです。

実際、交通捜査に長く従事した人が損害保険会社の事故調査業務で評価されるのは、私の周りでは定番のルートでした。実況見分や当事者からの聴取、調書の作成といった日常の業務が、そのまま事故調査の業務要件と重なるからです。同じ経験でも、持っていく先が違えば評価はまるで変わります。

問題は、その噛み合わせが組織の中にいる限り分からないことです。私が損保のルートを知ったのも辞めた後でした。だから、割増の条文を調べるのと同じくらいの手間で、在職中に一度、自分の経歴に何の求人が来るのかを見ておくことをおすすめします。在職中なら、結果を見てから「あと数年勤めて割増を取る」と決め直すこともできます。

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まとめ

  • 定年前早期退職の割増は実在する。ただし率も要件も入口も国と自治体でバラバラで、「2%」は東京都の数字
  • 警視正以上を除き、警察官に適用されるのは所属する都道府県の退職手当条例。例規集を開くか、厚生の担当に聞くのが確実
  • 要件の「勤続20年」は在職年数ではない。除算と1年未満の切り捨てを経たあとの勤続年数で判定される
  • 勤続19年以下の自己都合には、さらに率が掛かる。勤続20年は2つの条件が同時に切り替わる線
  • 三重県の公表資料で試算すると、同じ勤続25年でも自己都合か定年・応募認定かで約213万円の差。割増は給料月額をかさ上げして支給率を掛ける仕組みなので、国の3%は5年ぶんで約203万円になる
  • それでも辞める時期は金額だけで決めない。経歴と希望職種の噛み合わせは在職中に確かめられる

退職後の再就職に制限があるのかどうかは、別の記事にまとめています。

この記事で参照した条文

※ 条文は2026年7月時点、三重県・沖縄県の公表資料は2026年8月1日時点で確認したものです。制度は改正されます。実際の金額や要件は、必ず退職を予定する時点の条例と、所属の担当部署でご確認ください。

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