結論から言います。警察官を辞めた後、民間企業に再就職することに制限はありません。私自身、退職後に進む分野で制限を受けたことは一度もありませんでした。民間企業にあるような競業避止義務もありません。
法律で規制されているのは「再就職」ではなく、離職後2年間の、古巣への「働きかけ」だけです。業種も職種も自由に選べます。
ただし、「制限がないこと」と「経験が評価されること」は別の話です。ここは正直に書きます。私は評価されませんでした。その理由もはっきりしています。
執筆:元警察官ヒロ(約17年勤務・43歳で自己都合退職)
- 再就職に制限がないこと(法的な根拠つき)
- 唯一規制される「働きかけ」の中身と期間
- 警察官の経験が評価される条件と、評価されない条件
民間への再就職は、禁止されていない
辞めることを考え始めると、「公務員は退職後に何年か働けないのでは」「前職と関係のある業界には行けないのでは」という不安が出てきます。私もそう思っていました。
実際に辞めてみると、そうした制限はありませんでした。進む分野について制約を受けることはなく、興味のある方向に進んで問題ありませんでした。民間企業の転職で問題になる競業避止義務のような取り決めもありません。
なお、在職中の副業・兼業を制限しているのは地方公務員法第38条ですが、これは在職中の規定で、退職後の話とは別物です。混同されがちなので押さえておいてください。
規制されるのは「働きかけ」だけ
では何が規制されているのか。地方公務員法第38条の2に基づく退職管理の制度で、総務省の資料に整理されています。
規制されるのは「働きかけ」だけ
禁止されるのは、再就職先と古巣との契約・処分に関する事務についての依頼だけです。業種や職種そのものの制限ではありません。
誰が、何を、いつまで禁止されるのか
- 誰が:離職後に営利企業等へ再就職した元職員
- 何を:再就職先と、元いた自治体との間の契約や処分に関する事務について、現職職員に「こうしてほしい」と要求・依頼すること
- いつまで:離職後2年間(離職前5年間の職務に関するもの)。ただし在職中に自ら決定した契約・処分については期間の定めがありません
- 違反すると:元職員に過料または刑罰。働きかけを受けた現職職員には人事委員会への届出義務があります
警察官も当然に対象。ただし業種の制限ではない
総務省の資料は、規制の範囲を確定する組織の単位として「都道府県警察本部・警察署」を名指しで例示しています。警察官も当然この制度の対象です。
ただし、禁止されているのは古巣への口利きであって、再就職先の業種や職種ではありません。「辞めたら数年間まともに働けないのでは」という心配は不要です。普通に働く分には、意識する場面すらほとんどないはずです。
警察官の場合、具体的に何が「口利き」になるのか
条文だけでは自分に関係があるのか判断できないと思うので、警察官に起こり得る形に置き換えます。ポイントは「再就職先が、古巣から許認可や仕事をもらう立場かどうか」です。
警察が関わる許認可は少なくありません。警備業法第4条の警備業の認定、風営法第3条の風俗営業の許可などは、いずれも都道府県公安委員会が出すものです。その事務を担っているのは警察本部・警察署、つまり古巣です。
ここから、規制に当たり得るのは次のような場面になります。
- 警備会社に再就職し、自社の警備業の認定や更新について、元同僚の担当者に有利な取り計らいを頼む
- 再就職先が県警発注の契約(施設の警備委託、車両や装備品の納入など)を狙っており、その担当部署に口利きをする
- 自社が受けている行政処分や指導について、現職に手心を加えるよう依頼する
共通しているのは、自分の勤め先の利益のために、古巣の職員へ働きかけているという点です。逆に言えば、そこに当てはまらない行為は規制の外です。
元同僚と飲みに行くこと、近況を報告し合うこと、業界の一般的な情報を交換すること、まったく無関係な業種で働くこと。これらはいずれも問題になりません。多くの人にとっては、意識する場面が一度も訪れないまま終わるはずです。心配なのは、警備業や交通関係など古巣と取引や許認可の関係がある業界に進む場合で、その場合だけは再就職先の法務担当に確認しておくと安全です。
評価されるかは「経歴 × 希望職種」で決まる
開発の実務経験も実績もない(私のケース)
実況見分・聴取・調書が業務に直結(定番ルート)
では、警察官の経験は評価されるのか
ここからが本題です。制限がないことと、市場で評価されることは、まったく別の話でした。
私は評価されませんでした
約17年勤めて43歳で退職しましたが、私の警察官としての経験は、転職市場で高く評価されませんでした。
ただ、これを「警察官の経験に価値がない」と読まないでください。理由がはっきりしています。私が望んだ転職先がIT系だったからです。開発の実務経験がなく、実績もなく、年齢的に将来性を見込んでの採用も難しい。経験そのものではなく、経歴と希望職種の噛み合わせの問題でした。
評価される道は、実在します
私が見聞きした中で確実なのは、交通捜査に長く従事した人が、損害保険会社の事故調査業務で実績を評価されるルートです。実際に進んだ先輩が何人もいて、交通系の警察官にとっては定年後の定番の再就職先でした。
理由は考えれば当たり前で、事故の実況見分、当事者からの聴取、調書の作成といった日常業務が、そのまま事故調査の業務要件と重なるからです。同じ「警察官の経験」でも、持っていく先が違えば評価はまるで変わります。
噛み合わせは、自分では分からない
問題はここです。自分の経歴がどの職種で評価されるのかは、組織の中にいる限り情報が入ってきません。私が損保のルートを知ったのも、辞めた後のことでした。在職中に知っていれば、選択肢の見え方はまるで違ったはずです。
だから勧められるのは、在職中に一度、市場に自分を見てもらうことです。在職中なら、結果を見てから「やっぱり残る」という選択も取れます。辞めてから動くと、その選択肢がなくなります。
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まとめ
- 再就職そのものに制限はない。業種も職種も自由で、競業避止義務もない
- 規制されるのは離職後2年間の古巣への「働きかけ」だけ。普通に働く分には意識する場面はほとんどない
- 経験が評価されるかは経歴と希望職種の噛み合わせ次第。それは在職中に確かめられる
退職の手続きそのもの(退職金の計算、共済・健康保険・年金の切り替え、失業者の退職手当など)は、別の記事で詳しくまとめています。


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