楽天証券で大人気の「楽天SCHD」。その人気ぶりを受けたのか、SBI証券からも同様のシュワブ・米国株式ETF(SCHD)に投資する商品が登場しました。
2024年12月20日設定・運用を予定している「SBI・S・米国高評価株式ファンド(年4回決算型)」(以下:SBI版SCHD)について、本記事では、同投資商品の特徴と楽天SCHDの違い、どちらがどのような人に向いているのかについて詳しく解説します。
いつか出るとは思っていましたが、SBI証券からもシュワブ・米国株式ETF(SCHD)に連動した投資信託が発表されました。楽天証券との違いが気になるところです。
目次
SBI・S・米国高評価株式ファンド(年4回決算型)の基本情報
まずは「SBI版SCHD」の概要を確認してみましょう。
項目 | 詳細 |
---|---|
正式 | SBI・S・米国高金利株式ファンド(年4回決算型) |
愛称 | S・米国高評価株式100 |
投資対象 | シュワブ・米国株式ETF(SCHD) |
連動指数 | ダウ・ジョーンズUSディビデンド100インデックス |
設定日 | 2024年12月20日 |
実質コスト | 0.1238%程度(税込) |
資金分配(参考) | ETF「SCHD」は3.59%(2023年実績) |
過去10年間の増配率 | +11.4%(12年連続増配中) 参考:VYMは+7.1%(13年連続増中) |
年率リターン | 3年:+6.54% 5年:+12.47% 10年:+11.63% |
株価成長率 | 8.7%(10年平均) |
割り当て月 | 3月、6月、9月、12月 |
購入できる証券会社 | SBI証券のみ |
実質コストも低く、投資対象であるシュワブ・米国株式ETF(SCHD)の実績も十分です。何より増配率が魅力で配当にも複利が効くところは非常に魅力的です。
同じ投資対象に投資している楽天SCHDに関する記事はこちら。今後の増配の可能性についても書かれています。
楽天SCHDとの違いと共通点
楽天SCHDとSBI版SCHDは、どちらも「シュワブ・米国株ETF(SCHD)」を投資対象とし、高配当を目指したファンドです。ただし、販売プラットフォームやコスト構造など異なる点があります。
共通点
- 投資対象:どちらもSCHDに連動する値動き
- 配当金を重視:年4回の分配金を予定
- 低コスト:ETF運用を活用したコストの抑制
違いの比較表
項目 | 楽天SCHD | SBI版SCHD |
---|---|---|
販売開始日 | 2024年9月27日 | 2024年12月20日(予定) |
実質コスト | 0.192%(税込、ETF経費込み) | 0.1238%程度(税込) |
割り当て月 | 2月、5月、8月、11月 | 3月、6月、9月、12月 |
購入可能な証券会社 | 楽天証券のみ | SBI証券のみ |
純資産総額(2024年11月時点) | 579.08億円 | 未設定(新商品) |
初回分配金 | 2025年2月 | 2025年6月 |
信託報酬の差
楽天SCHDに比べSBI版SCHDの実質コストが安いことから、これから投資をする人はSBI版SCHDに投資すればよいと思いますが、現在、楽天SCHDに既に投資をしている人は乗り換えるべきでしょうか?
それぞれの実質コストの差は0.0682%であり、これが長期投資にどう影響を与えてくるのかを見てみましょう。
追加投資あり
シミュレート条件
- 株価成長率8.7%(10年平均)
- 増配率11%(10年平均)
- 30年間運用
- 配当は再投資
- 枠内は評価額、()内はその年までの総コスト額
一括投資100万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 301万円(3.7万円) | 303万円(2.4万円) | 11.5万円 |
投資20年目 | 956万円(15.2万円) | 964万円(9.8万円) | 42.3万円 |
投資30年目 | 3166万円(52.7万円) | 3202万円(34.3万円) | 154.9万円 |
一括投資300万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 904万円(11.1万円) | 909万円(7.2万円) | 34.6万円 |
投資20年目 | 2868万円(45.5万円) | 2893万円(29.5万円) | 126.9万円 |
投資30年目 | 9499万円(158万円) | 9605万円(102.8万円) | 464.6万円 |
一括投資500万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 1507万円(18.4万円) | 1515万円(11.9万円) | 57.7万円 |
投資20年目 | 4780万円(75.9万円) | 4822万円(49.2万円) | 211.4万円 |
投資30年目 | 15831万円(263.3万円) | 16008万円(171.4万円) | 774.3万円 |
一括投資1000万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 3015万円(36.9万円) | 3029万円(23.9万円) | 115.5万円 |
投資20年目 | 9560万円(151.8万円) | 9644万円(98.5万円) | 422.9万円 |
投資30年目 | 31663万円(526.7万円) | 32015万円(342.7万円) | 1548.6万円 |
一括投資の場合は長期になればなるほど実質コストの差が大きな金額の差になっています。次に積立投資について見ていきます。
例えば300万円を一括投資した場合、楽天SCHDとSBI版SCHDとで30年間で支払う手数料に約56万円もの差があります。
積立投資3万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 682万円(6.1万円) | 684万円(3.9万円) | 21.6万円 |
投資20年目 | 2669万円(36.9万円) | 2686万円(23.9万円) | 83万円 |
投資30年目 | 8419万円(139.3万円) | 8504万円(90.5万円) | 257.2万円 |
積立投資5万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 1137万円(10.1万円) | 1141万円(6.5万円) | 36万円 |
投資20年目 | 4448万円(61.4万円) | 4477万円(39.8万円) | 138.3万円 |
投資30年目 | 14032万円(232.2万円) | 14174万円(150.9万円) | 428.7万円 |
積立投資7万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 1592万円(14.2万円) | 1597万円(9.1万円) | 50.4万円 |
投資20年目 | 6227万円(86万円) | 6268万円(55.7万円) | 193.6万円 |
投資30年目 | 19645万円(325.1万円) | 19844万円(211.3万円) | 600.2万円 |
積立投資10万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 2274万円(20.2万円) | 2281万円(13.1万円) | 72.0万円 |
投資20年目 | 8895万円(122.8万円) | 8955万円(79.6万円) | 276.6万円 |
投資30年目 | 28064万円(464.4万円) | 28348万円(301.8万円) | 857.4万円 |
積立投資の場合も、長期投資になればなるほど数十万円~数百万円以上のコスト差が出る場合があります。
例えば、毎月5万円づつ積立投資をし配当金を再投資した場合、30年間で支払う手数料に約80万円もの差が出てきます。
追加投資なし
シミュレート条件
- 株価成長率8.7%(10年平均)
- 増配率11%(10年平均)
- 30年間運用
- 配当は再投資
- 枠内は評価額、()内はその年までの総コスト額
一括投資100万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 227万円(3.1万円) | 228万円(2万円) | 9.2万円 |
投資20年目 | 513万円(10.1万円) | 519万円(6.6万円) | 26.1万円 |
投資30年目 | 1160万円(26万円) | 1182万円(17万円) | 74万円 |
一括投資300万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 680万円(9.3万円) | 684万円(6万円) | 27.6万円 |
投資20年目 | 1539万円(30.3万円) | 1557万円(19.7万円) | 78.2万円 |
投資30年目 | 3481万円(77.9万円) | 3545万円(50.9万円) | 222.1万円 |
一括投資500万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 1133万円(15.5万円) | 1140万円(10万円) | 45.9万円 |
投資20年目 | 2564万円(50.5万円) | 2595万円(32.8万円) | 130.4万円 |
投資30年目 | 5802万円(129.8万円) | 5909万円(84.8万円) | 370.2万円 |
一括投資1000万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 2267万円(31万円) | 2280万円(20万円) | 91.8万円 |
投資20年目 | 5129万円(101.1万円) | 5190万円(65.7万円) | 260.8万円 |
投資30年目 | 11604万円(259.6万円) | 11818万円(169.5万円) | 740.4万円 |
積立投資3万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 581万円(5.4万円) | 583万円(3.5万円) | 21.6万円 |
投資20年目 | 1895万円(28.7万円) | 1909万円(18.6万円) | 83万円 |
投資30年目 | 4868万円(92.7万円) | 4930万円(60.3万円) | 257.2万円 |
積立投資5万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 968万円(8.9万円) | 971万円(5.8万円) | 36万円 |
投資20年目 | 3158万円(47.8万円) | 3182万円(31万円) | 138.3万円 |
投資30年目 | 8113万円(154.4万円) | 8216万円(100.5万円) | 428.7万円 |
積立投資7万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 1355万円(12.4万円) | 1359万円(8万円) | 50.4万円 |
投資20年目 | 4421万円(66.9万円) | 4455万円(43.3万円) | 193.6万円 |
投資30年目 | 11359万円(216.1万円) | 11503万円(140.6万円) | 600.2万円 |
積立投資10万円 | 楽天SCHD | SBI版SCHD | 年間配当額 |
---|---|---|---|
投資10年目 | 1936万円(17.7万円) | 1942万円(11.4万円) | 72万円 |
投資20年目 | 6316万円(95.5万円) | 6364万円(61.9万円) | 276.6万円 |
投資30年目 | 16227万円(308.8万円) | 16433万円(200.9万円) | 857.4万円 |
再投資無しの場合は、再投資ありの場合に比べて運用する額が減るので、それに比例してコストが減っています。ただ、再投資ありの場合と同様に、
- 運用が長期間にわたる場合
- 運用額が大きくなる場合
この2点のどちらかまたは両方に該当する場合は、例えコスト差が0.0682%とはいえ大きな金額差になることがわかります。
また、今回のシミュレート条件は過去10年のリターンを基にしたものであり、今後のリターンを保証するものではありません。
やはりファンド運用に掛かるコストは、トータルリターンに小さくない影響を与えるようです。
どちらを選ぶべきか?
一見、コストの低いSBI証券のSCHDを購入するべきかと思いますが、購入する人によりどちらがベストかは変わってきます。
どちらも良い投資商品であるので、既に楽天証券でNISA口座を開設している人であれば楽天SCHDは十分選択肢になりえます。これは、楽天SCHDの純資産額が増大してきたことからSBI証券を意識してコストを下げる可能性も十分あるからです。
半面、これから投資を始める人や既にSBI証券でNISA口座を開設している人はSBI版SCHDを選択すると良いでしょう。より低コストで運用することが可能であり資産の増大に期待ができます。
楽天証券もSBI証券もポイント還元等で利用者への還元が活発であり、手数料の安さやネット証券ならではの使いやすさもあるので、これから投資を始める人はどちらかの口座を開設することをオススメしています。
投資リターンは自身で上げることはできませんが、コストはより安い商品を選択することで抑制することが可能です。
SBI版SCHDの魅力
「SBI版SCHD」には、楽天SCHDにはない以下の魅力があります。
低い投資コスト
SBI版SCHDの実質コストは0.1238%(税込)で、楽天SCHDより低コストです。
この投資商品は長期で投資して配当を得ることを目的とする人が多いと思います。その場合、このコスト差は最終リターンに与える影響は無視できません。
SBI証券のメリットを享受できる
SBI証券は多様な投資商品を待ち手数料も安い業界トップクラスの証券会社です。利用者へのキャンペーンも各種行っており、
- 投信マイレージ:投資信託の残高に応じてポイントを付与
- クレジットカード積立(クレカ積立):最大3%のVポイントが付与される
など投資をすることでポイントを還元されるシステムがあります。付与されたポイントはクレジットカードの支払いや航空会社のマイルへ交換、投資に回すなど用途は多岐にわたります。
分配金(配当)の受取方法を変更可能
SBI版SCHDは分配金受取方法を途中で変更可能です。ある程度の資産額、またはある程度の年数まで再投資を選択し、途中で分配金(配当)を受取る選択に変更することが可能です。
これにより、60歳まで再投資を選択しつつ60歳になった時点で受取に変更して年金のように活用することも可能です。
自分年金を作るには最適な投資信託だと思います。
注意点とリスク
「SBI版SCHD」は、他の投資商品と同様にリスクもあります。
設定直後の実績データ不足
SBI版は2024年12月に設定・運用予定のため、運用実績が未知数です。楽天SCHDは若干ではあるもののすでに運用を開始しており実績がありますが、SBI版SCHDはこれからの運用パフォーマンスが鍵となります。
現時点ではシュワブ・米国株式ETF(SCHD)の過去実績を基に解説しているため、ある程度の運用状況を推定することは可能ですが、過信し過ぎないことも大切です。
シュワブ・米国株式ETF(SCHD)のリスク
シュワブ・米国株式ETF(SCHD)はアメリカの優良な約100銘柄に分散投資をしているETFであり、実績も十分ではあるものの、上位20銘柄で純資産の約70%を占めていることから必ずしも分散が効いているわけではないことを理解してください。
リンク先の記事でSCHDの上位20銘柄の分析をしています。
購入方法と今後の展望
購入手順
- SBI証券の口座開設
まだ口座を開設していない方は、SBI証券の公式サイトから申し込みを行います。 - ファンドの選択と購入
2024年12月6日(金)以降に公式サイトで「S・米国高金利株式100」を検索し、購入手続きへ進みます。 - 購入後の運用確認
ファンドの運用状況は、SBI証券のマイページで簡単にチェックできます。
今後の展望
SBI版SCHDは、SBI証券でNISA口座を持ち投資をしていた人たちにとって待望の投資信託ですので、あっという間に純資産額が増えると思われます。
また、楽天SCHDに比べて実質コストが低いこともあり、乗り換える人も出てくるものと思われます。今後、楽天SCHDもコストを下げてくるとは思いますが、現時点で十分コストが低いので、惑わされずにじっくり長期投資をしていくことが良いでしょう。
何か新しい情報が出たら記事をアップします。
まとめ
楽天SCHDとSBI版SCHDは、どちらも株価成長と分配(配当)をテーマとした魅力的なファンドです。楽天証券を利用している人は楽天SCHDが、これから投資を始める人や既にSBI証券を活用している人にはSBI版SCHDが適しています。
どちらも優良な投資商品ですので、安定した配当を得てFIRE(経済的自立早期リタイヤ)を目指す人や、老後の年金代わりに配当を考えている人はぜひ検討してみてください。
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