私は、長年にわたって警察官として働いた経験があり、父が市役所に勤務していこともあり、公務員という職業とは深い縁があります。私の経験を中心に、公務員として働くことのメリットや、実際に公務員として働いてわかった内包されているリスクについて話していきたいと思います。
また、公務員としての働き方に疑問を感じ、最終的に退職を決意した私自身の体験も交えながら、皆さんが将来のキャリアを考えるきっかけとなるような情報をお伝えしたいと思います。
- 現在公務員として働いている人
- これから公務員として働こうとしている人
- 将来の働き方に不安がある人
私は民間企業から公務員へと転職してきました。公務員は、民間企業に比べて、いろいろと常識が違い過ぎて、公務員文化にかなり戸惑ったことを覚えています。
公務員として働くことのメリット・デメリット
一般的に、公務員は「将来安泰」であり、民間企業に比べて雇用条件が優遇されているとったいイメージがあります。ここでは公務員として働くメリットについて解説していきます。
公務員として働くことのメリット
公務員という職業は「安定している」というイメージが強いですが、実際に公務員は身分を保証されているため、雇用としては安定しています。
身分の保証とは、「辞めさせられない」ということであり、実際に公務員として働いていと、よほどの問題(仮に犯罪行為であっても)を起こさない限り退職させられることはまずありません。
では、身分の保証の他にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
地方では高水準の給与
公務員のもう一つのイメージとして「高給取り」といったイメージもあるでしょう。上記の表は総務省「令和3年地方公務員給与実態調査」からのデータですが、この表を見ると地方では高い水準の給与をもらっているように見えます。
ただ、この「高給取り」のイメージは、地方の中小企業と比較した場合のものであり、それなり以上の企業で勤務している人からすると疑問に思うところだと思います。
この表は総務省「令和4年地方公務員給与実態調査」からのデータです。この表から、若手は基本給が低いものの年齢と共に基本給が上昇していることがわかります。
これは、公務員には年功序列制度が強く残っているためであり、役職による差はあるものの勤続年数に応じて昇給が見込めます。更には、定年まで働くことで退職金をもらうこともできるのです。
低い離職率
公務員のイメージとして、「公務員になると一生安泰」といったものもあるでしょう。これは低い離職率から定年まで勤め続ける人が多いことによるものだと思います。
総務省「令和3年地方公務員の退職状況等調査」によるデータを見ると、退職者の半数以上が定年退職者で占めており、定年退職者以外の退職者は全体の約1%程度です。これはかなり低い水準になります。
社会的信用の高さ
公務員のもう一つの大きなメリットは「社会的な信用の高さ」です。
- 住宅を借りる際の審査
- クレジットカードの審査
- 銀行の融資、住宅ローンの審査
このような長期的な支払いを要する際に社会的信用が必要となります。
公務員として働いていることで、金融機関からは「安定した収入を得ている人物」として見られるため、融資の条件も良くなり、資金調達がしやすくなる傾向があります。
福利厚生の充実
公務員には、手厚い福利厚生があります。私が公務員だった時も、各種手当がありました。
- 住居手当:住居費の補助、家賃の半額(上限額あり)など
- 通勤手当:定期代、ガソリン代相当額
- 扶養手当:妻や子、両親など封用家族がいる場合に一定の条件下で支払われる
- 地域手当:物価の高い地域などで支払われる
- 特別勤務手当:危険、不快、不健康な業務に従事する際に支払われる
各種手当の他、傷病時に休職した際も3か月間は給与が支給され、その後も1年間は減額されつつも一部手当が支給され続けます。
健康保険や年金制度もきちんと整備されており、退職後の生活も比較的安定していると言えます。
私も現職時に、「亡くなった方のご遺体を取扱う業務」として特別勤務手当として数百円支給がありました。腐乱してると数百円上乗せです。
公務員として働くリスク
公務員として働くことは一見メリットばかりのように見えます。しかし、物事には裏表があるようにメリットがある場合はデメリットももちろんあるのです。
割に合わない賃金報酬額
メリットの項目で、「地方の中では高い給与水準」と話していますが、これは業務による拘束時間や精神的負荷を考慮するとあまり高いとは言えないかもしれません。
公務員であれば、なにかと世間からの風当たりは強くなりますし、昨今では人員削減により正規職員が減ることで一人当たりの業務量が増え、サービス残業が常態化しています。
このような事情から時間当たりの賃金としては特別高い報酬を受け取っているわけではないのです。
また、退職時の年金もメリットの項目で話していますが、こちからも年々支給額が減少しています。
十数年前の私の職場では、退職者がもらう退職金は3000万円近い金額でした。しかし、ここ最近では退職金の支給額が下がり、2000万円程度まで減少してきています。
今後も退職金は減少していく傾向にあります。
退職金は毎月の給与から天引きされて積み立てています。その退職金が年々支給額が減っているのは不思議ですね。
休職者が多い
デメリットの一つでメンタルを病んで休職する職員が多いことです。自身がメンタルを病む可能性があるだけでなく、同僚が休職した際に業務負担が増大するといったデメリットも含んでいます。
令和3年「地方公務員健康状況等の現況」によると、「精神および行動の障害を要因とする休職者数」が右肩上がりであり、10年前の1.5倍、15年前の2.1倍にまで増えています。
現時点までに劇的に改善するような対策は取られていなので今後も増えていくことが予想されます。
対人関係が原因のトップです。この要因として考えられるのが、環境を変えづらいことが原因と考えられます。
環境を変えるには部署の異動や転職などがありますが、転職がしづらい公務員は、次の人事異動まで耐えることしかできず、人事異動まで耐えきれなかった人が休職しているものと考えられます。
私自身は20年近く警察官として勤務していましたが、近年では同じ県の警察官が毎年1人は自身で生きることを辞めていました。原因はいろいろあるとはいえ、ヤバい職場だったのだと思います。
非効率的な業務と改善の難しさ
公務員としての仕事には「非効率さ」がつきものです。私が感じた最も大きなリスクは、この非効率さに対する改善が非常に難しいという点です。
たとえば、私が民間企業で働いていた時と比較すると、公務員の職場は費用対効果を意識することが少なく、予算や人件費があらかじめ決められているため、サービス残業が常態化されており、それが当然とされていました。
新しい方法や改善提案を持ちかけても「前例にないから」といった理由で却下されることが多々ありました。これが公務員の一種の文化として根付いており、働いている人自身もその非効率さを疑問に感じないことが少なくありません。
この非効率的な業務内容と改善しない職場環境は、働く人のモチベーションを下げ、さらなる業務効率の低下につながるのです。
転職市場での評価が低い
公務員として働いていると、民間企業で重宝されるようなスキルが身に付きづらいというリスクがあります。特に年を重ねるにつれて、転職市場での評価が下がる可能性があります。
若いうちであればまだ転職のチャンスはあるかもしれませんが、40代以降になると「若さ」も「スキル」も無いため、転職は非常に難しくなります。
私自身も、公務員として長く勤務したことで、転職に必要なスキルが不足していることを感じました。そういったスキル不足は、将来のキャリアを考える際に大きなリスクとなります。
プライベートな時間の制約
私が公務員として働いていた際の大きなデメリットとしては、プライベートな時間が非常に制約される点が挙げられます。
私自身は、警察官だったので事件が起きれば、昼夜問わず呼び出され、休みの日でも対応を求められることがありました。また、旅行に行く際には、職場への届け出が必要で、特に海外旅行では1か月以上前に詳細なスケジュールの提出が求められました。
では、警察官以外の公務員(市役所などの職員)はプライベートは問題ないのかと言われるとそうでもありません。部署にもよりますが、災害時の対応や選挙の対応、行政のイベントなどいろいろなところで都合よく使われてしまいます。この時、残業代がでればまだ幸運です。
また、地方の役場などで勤務していると自治会などに参加しないわけにいかず、飲み会の強制参加や地域イベントなどで何かと週末はつぶれてしまうこともあるのです。
転勤・単身赴任がある
公務員の大きなデメリットの一つが転勤や単身赴任の問題です。上記の表は北海道教育委員会のHPに掲載されていた単身赴任手当に関する表ですが、どこの都道府県もそこまで大きく金額に変わりはなく、同じ県内の異動であれば100km~200km未満なので、支給される単身赴任手当は多くても38,000円が相場になります。
警察官の場合、転勤が頻繁にあるため、在職期間の1/3~2/3は単身赴任をしていたといった話も珍しくありません。単身赴任手当は支給されますが、実際にその手当は微々たる額であり単身赴任先での家賃にも足りません。
世帯が分かれることにより追加でかかる生活費やガソリン代等は手出しすることになり、残された配偶者と子供にも負担を強いることになります。
現代の夫婦共働きが一般的な世の中では、転勤で妻と子供に着いてきてもらうわけにもいかないですし、単身赴任で子供の世話を全て妻に頼むことも現実的ではありません。
公務員として働き続けるべきか?
ここまで読んで、「私は転職なんて考えていないからリスクなんてないよ!」と思われる方もいるかもしれません。確かに、私自身もはじめの内は公務員を辞めるなんて考えたことはありませんでした。しかし、長年公務員として働くうちに、その仕事の非効率さや生活の制約に対する疑問が大きくなり、最終的には退職を決断しました。
結論としては、今の仕事で満足している人は続けるのが正解なのではないかと思います。ただ、少しでも違和感があるのであれば、別の働き方を考えてみるのも良いかと思います。その時に取れる選択肢を増やすためには自分のスキルを磨くことと資産をつくることです。
余談:私が退職を決意した理由
私は警察官として長年仕事に打ち込んできました。以前は仕事をしながら「このまま退職まで警察官として働くものだ」と漠然と考えていました。
しかし、ある時、職場の上司からのパワハラで休職することとなり、じっくりと「自分の人生」について考える時間ができたのです。
休職中に「このままで良いのだろうか」と考えて、職場の同僚に相談した際には「のらりくらりと仕事して定年まですごせばいいのでは?」といった意見もありました。
公務員は社会に必要な仕事であり、雇用としても公務員は安定していて、給料は毎月支払われ、解雇されることもありません。家族を養う身としては何としても職場にしがみつくことも選択肢の一つだったのだと思います。
そんな中、妻から「好きでもない職場にあと25年も人生をささげるの?」と言われたことではっとさせられました。
定年退職までの25年もの人生を好きでもないことに費やすのはあまりにももったいない。「きっとこのまま働き続けると後悔してしまう」と思い退職を決意したのです。
妻に「退職する決断」を後押ししてもらったことは、とても心強かったです。家族の後押しは本当にうれしいですね。
たいていの場合は反対されるんですけどね・・・
私が公務員を退職する決断を後押ししてくれたもう一つの要因が資産形成によって得られた経済的な余裕でした。
公務員としての給与以外にも、投資など別の収入源を持つことで、私は「辞めても生活できる」という心の余裕を手に入れることができました。
この経験から、私は給与以外の収入源を持つことの重要性を強く感じました。
資産を持つことによって、職場はしがみつく場所ではなく、いつでも辞められる場所となるのでストレスや将来の不安が大幅に軽減されるのです。
転職やスキルアップを考えるべき理由
公務員として働いていると、転職やスキルアップについて考える機会が少ないかもしれません。しかし、私は今後の人生を自由に過ごすためには、転職やスキルアップが大きな鍵になると感じています。
たとえば、転職活動自体にはリスクはありません。むしろ、自分の市場価値を確認するための良い機会となります。公務員としての生活に不満を抱えている方は、スキルアップや転職活動に挑戦してみることで、将来的な選択肢を広げることができます。
もし、今の働き方に疑問を感じているのであれば、転職サイトで自分のスキルがどのように評価されるか確認してみるのも一つの手です。また、資格取得を目指して新たなスキルを身に付けることで、転職市場での競争力を高めることができるでしょう。
ここで、おすすめの転職サイトや資格取得に役立つサービスを紹介します。これらのリンクから、自分に合った転職先やスキルアップのチャンスを見つけてみてください。
まとめ
公務員として働くことには、多くのメリットがありますが、それに伴うリスクも少なくありません。私は公務員としての経験を通じて、その両面を実感しました。
今後の人生をどう過ごすかは、皆さん自身の選択にかかっています。転職やスキルアップ、副業を通じて、自分の可能性を広げることは決して無駄ではありません。どんな状況でも、「いつでも辞めることができる」という余裕を持って働くことで、驚くほどストレスが軽減され、前向きに仕事に取り組むことができるようになります。
ぜひ、皆さんも公務員という枠にとらわれず、様々な可能性にチャレンジしてみてください。未来は自分の手で切り開くことができるのです。
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